元教師 黒目のブログ

元公立の教師で現在も子育ての世界で働いています。公教育、私教育合わせて約7年間仕事で子供を育てています。そんな中で役に立ちそうな知識や経験をアウトプットしていきたいと思います。

障害を持ってるわが子の将来を心配する親御さんへ

どうもみなさんこんにちは
先日こんな論文を目にしました。

発達障害者の就労上の困難性と具体的対策─ASD者を中心に
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/08/pdf/057-068.pdf


発達障害のお子さんを持つ親なら誰しも思うことだと思うのですが、
「私の子供が今こんな障害を持っているのでこの先社会に出て大丈夫かしら?」
と現在進行形で悩んでいる方が多くいると思います。
ただ、今回の投稿で私が言いたいことは、
①現状社会に出てこのような問題が起こる可能性がある。
②それに向けてこのような改善がなされている。
という取り組みを知ることで、不安を低減されればいいなという思いで投稿した次第です。
なので、少し不安になる現状もあるかもしれませんが、そこは今後の社会の課題と捉えていただきたいです。
今回もいつも通り、論文の要約と解説を元に、私の考えや感想を述べていきたいと思います。

1.要約&解説
この研究ではアスペルガー症候群を中心とする ASD 者の就労上の困難性と具体的対策についてまとめたものです。
これは2004年の梅永の調査結果として就労してからの課題としては

上司や同僚が言ったことが理解できない
相手にうまく伝えることができない
好ましくない言語表現を表し,相手を不快な思いにさせてしまう
曖昧な言動は理解できない
相手の気持ちを無視して自分の好きなことだけをしゃべり続ける
自分勝手な行動をしてしまって,周りから嫌がられる感情的になりやすく,かんしゃくを起こす
場の空気が読めない人たちが多いため,人間関係に支障を来してしまう

の5つが挙げられました。また、離職の理由としては、

仕事がつまらなかった
人間関係で問題を抱えた
雇用主に自分の障害を理解してもらえなかった
普通の人の感覚を身につけさせようとされ精神的なダメージを受けた
「障害など関係ない,努力してなおせ」と言われ重圧になった
会社でいじめを受けた会社の業務,人間関係が出来なかった
仕事をするのが遅いので向かなかった
自分に合わない仕事だった
仕事の技術面で追いつかなかった
人より時間がかかった
簡単な作業が出来なかった
期待に応えようと頑張ったが疲れた
人間関係のややこしさ,指示の多さにパニックを引き起こした
自分の能力では手に負えなかった自分のペースで働けなかった
リストラにあった
ストレスと体力的に続かなかった
仕事のレベルアップができなかった
いじめにあったり,無視されたりした

が挙げられています。
このリストを見てわかる通り、ほとんどはASDの特性ゆえに就労問題や離職をする原因になっているようですね。
それらを踏まえ現状の課題として

適切なジョブマッチングがなされていないこと
職場の同僚上司が ASD に対する理解が進んでいないこと
彼らの特性に合った職場の合理的配慮がなされていないこと
就職後のフォローアップが十分でない

などが挙げられます。
これらの問題を解決するために支援者にどのような支援をした結果、スムーズな就労支援ができたかというと、2016年の井口・梅永・遠藤らの報告によれば、

1.事では,どの程度の構造化が必要ですか?
・多くの構造化が必要である
・何を,いつ,どのようにしたらよいかがわからないことがあるため必要に応じて構造化してもらえると助かる
・自分で予定を立てることが困難なため,職務の優先順位については指示をしてほしい
2.人とのかかわりはどのレベルであれば大丈夫ですか?
・人とのかかわりが全くなく,1 人で働く職場がいい
・できるだけ,人とのかかわりは最小限にしてほしい
・人とのかかわりがあっても大丈夫だが,大勢の人の中で働くのは疲れる
3.働く場所はどのようなところがいいですか?
・屋内で働きたい
・屋外で働きたい
・どちらでも構わない
4.どのような仕事が好きですか?
・パソコンを使った仕事
・動物と関わる仕事
・数字などを扱う仕事
・機械操作の仕事
・その他
5.あなたにとって仕事を選ぶ際に,ほかに重要な基準は何ですか?

のSDのための職業カウンセリングチェックリストを使った支援方法が報告がされています。確かにこのリストを使うことで、適切なジョブマッチングが行えそうですね。
その他にも「主な仕事はなにか?」「残業や休日出勤は見込まれているか?」などのワークシートによる職業ガイダンスや、前もって先の見通しをもてるような支援を行うフォローアップの取り組みなどが行われています。

2.考え&感想
私も子育てをメインで仕事をしており、障害のある子供が将来どういう道があるのか、どのような支援をされるのかが、この論文を読むまで漠然としていました。
この論文の取り組みが今後行われるようになれば、確かに今後は上記のような就労してからの課題や、離職となるような課題はなくなっていくのではないでしょうか?
自分が受け持っている子供の中にも
「社会に出て大丈夫かな?」
という子がたくさんいたので、私自身も先の見通しを持って子供の指導に携わっていけると思います。
もし、現在先の見通しが見えず、就労のことで悩んでいる保護者の方がいらっしゃいましたら、是非本投稿を閲覧してください。
現在このような取り組みが行われていることを知り、今何ができるかを具体的に理解できると思います。
本投稿は以上です。
ここまで閲覧ありがとうございました。

参考文献:
こんなサポートがあれば! エンパワメント研究所,梅永雄二(2004)

井口修一・梅永雄二・遠藤径至・木田有子・猪瀬瑤子・竹場悠・工藤英美里(2016)発達障害ASD)のある求職者を対象とした基本的な就労支援ニーズを把握するための職業相談シートの作成.第 24 回職業リハビリテーション研究・実践発表会発表論文集,30-31.

発達障害者の就労上の困難性と具体的対策─ASD者を中心に,梅永雄二
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/08/pdf/057-068.pdf