元教師 黒目のブログ

元公立の教師で現在も子育ての世界で働いています。公教育、私教育合わせて約7年間仕事で子供を育てています。そんな中で役に立ちそうな知識や経験をアウトプットしていきたいと思います。

学習障害(LD)傾向児童の自己肯定感を高める支援の在り方-通級による指導におけるビジョントレーニングの効果-

どうもみなさんこんにちは
先日こんな論文を見ました。

学習障害(LD)傾向児童の自己肯定感を高める支援の在り方-通級による指導におけるビジョントレーニングの効果-
https://www.educ.juen.ac.jp/topics/files/elfinder/2019-37.pdf

はやりLDの障害を持つせいで学校の授業が理解できなく
「自分はバカなんだ・・・」
と子供なりに思ってしまい、自己肯定感が低くなってしまうLDの子供も少なくありません。
よって、この論文で得た知識を元に、LDの子を持つ保護者様に助けになるような知識を発信していきたいと思います。
題して・・・

学習障害(LD)の子供を持つ保護者必見!勉強ができなくて自分に自信が持てなくなる可能性を科学的に減らす方法!

いつものように論文の要約&解説を元に、自分の考えや感想を述べていきたいと思います。
本日もお付き合いください。

1.要約&解説
この研究は2019年に発表されたもので、通級による指導においてLD傾向の児童に対し、ビジョントレーニングを取り入れた指導により、読み書きの困難さの改善に取り組むことで自己肯定感を高めることを目的としています。
まずビジョントレーニングってなに?という方のために簡単に解説すると、眼の諸機能を鍛えることによって脳を活性化させるとともに、集中力・判断力・情報処理能力など、様々な能力を高めるトレーニングのことです。
またこの研究の対象者として、小学三年生の女の子に着目しています(Aさん)。Aさんの特徴を簡単にまとめますと

・走ることが得意
・ボール運動や器械運動が苦手
・真面目で優しく、穏やかな性格
・学習に自信が持てない
・板書をノートに写すのにかなり時間がかかる。
・字が汚く枠からはみ出してしまう
・漢字を見て正しく書き直すことができず、練習しても定着しない。

などが挙げられます。またWISC-IVの結果では、

FSIQ:84,VCI:97,PRI:89,WMI:60,PRI:96で,下位検査(平均点10)の行列推理と数唱が評価点5,語音整列は1であった。この数値から,Aは言語理解力と処理速度はある程度高いが,見たものを正しく認知する力はやや低く,視空間認知が苦手という状態であり,注意して聞くことや情報操作することに最も困難さを示すことが明らかになった。

となりました。
要するに見ることと聞くこと困難さと自己肯定感の低さが大きな課題であることがわかりました。
以上の実態からその改善方法として、

(1)実態把握のためのアセスメントを行い,必要に応じてビジョントレーニングなどの有効な手立てを考え,個別の指導計画に明らかにする。
(2)個別の指導計画に基づき,通級による指導時に手立てを実施する。
(3)本人,保護者及び在籍学級の学級担任によるPDCAサイクルの定期的な評価を実施し,改善に取り組む。

という流れで解決に踏み切ろうという流れを作りました。
その結果・・・

・Aは次第に滑らかな眼球運動ができるようになり,頭を動かすことなく眼球だけを動かせるようになっていった。
・9月には在籍学級の学級担任から「ノートのマスに字が収まるようになった」「字のバランスがよくなった」と報告があった。
・10月には今までは10点満点中6,7点だったテストで9点をとれて喜んでいた。国語の授業では,新出漢字に「知っている!もう書ける」と自信をもって学習を進め,コンピュータを活用したローマ字打ちで「先生手伝わないで。自分で頑張るから」と意欲的に取り組む姿勢が見えるなど,徐々に自信をもてるようになってきた。
・カタカナに関しては,意味付けて覚える指導が有効で,「シ」は「し」,「ツ」は「つ」と同じ書き順と気付くと間違いが減少し,正しく書けるようになった。

となりました。
明らかによくなっているのが論文を読んだ私からでも見て取れる結果になったようですね。

 

2.感想と考え
この研究により、困難さをもつ他の児童の状態に応じて、取り巻く環境を合理的に整えることによって、自己肯定感の高まりにつなながる可能性の光を見れたと思います。
またこの研究は非常に具体的なので、今すぐ子育てに取り入れることができ、現場での即効性に長けているものであると思います。
ただ良い方向に進むためには、今回の事例のように、心理検査等による知的発達水準の把握と同時に、特異な認知的特徴の把握を明らかにした上で、
適切なアプローチにつなげる丁寧な取り組みと手立てが必要なので、今閲覧しているLDの子を持つ保護者の方は今一度上記の流れを見直し
「そういえば漠然とLDって決めつけて知能検査受けてないかも・・・」
「やり方がおかしかったかも、ビジョントレーニングまで受けていない・・・」
「Aさんの特徴ってウチの子とすごく似てる・・・」
と思われたら上記と違っていた部分を再設定すれば、お子さんが良い方向に進んでいくかもしれません。
私自身の経験から見てもきちんとした検査を元に様々な改善方法をためすことが多いので、この流れで負の方向に子供が進んでいくことはほぼ間違いなくないと思います。
今回の記事は以上となります。
本投稿がLDの子供を持つ保護者様の一助になれば幸いです。
ここまで閲覧ありがとうございました。

参考文献:
学習障害(LD)傾向児童の自己肯定感を高める支援の在り方-通級による指導におけるビジョントレーニングの効果-
https://www.educ.juen.ac.jp/topics/files/elfinder/2019-37.pdf