元教師 黒目のブログ

元公立の教師で現在も子育ての世界で働いています。公教育、私教育合わせて約7年間仕事で子供を育てています。そんな中で役に立ちそうな知識や経験をアウトプットしていきたいと思います。

「集中力」を高める学習環境の設定について

どうもみなさんこんにちは
先日このような論文を目にしました。

「集中力」を高める学習環境の設定について
http://www.e-net.nara.jp/kenkyo/index.cfm/21,2490,c,html/2490/19_kiyou_h17.pdf

この論文を読んで、私自身も「あ~なるほどな、確かに今まであやふやになっていたかも」と思うことがあったので、
今回は集中力を高める学習環境について論文を要約し、それを元に自分の考えを踏まえて解説していこうと思います。

1.要約
この研究では子供を対象に、「集中力」とは何か、また「集中力」を高めるためにはどのような配慮が必要なのかを調べています。
そして実際の事例を元に改善案を提案しています。
例えばこの研究対象になっているA君の実態をまとめると、


・小学四年生の男の子
・授業中は注意散漫
・全体で指示されたことを自分のこととして聞くことができない
・体の使い方が不器用ではある
・起こった出来事や自分の気持ちをうまく表現することができない
・計算や漢字を覚えることは得意だが、文章読解が苦手
・様々な場面でルールを守れない


という子供です。
この研究ではまず、A君の知的能力を様々な検査を用いて測定しました。その結果


・同時処理が強い、視覚的系列化が弱い
・処理速度が遅い
・複雑な言語指示が弱い、言語概念化が弱い
・知識の蓄えが弱い


という課題が見られました。
それらの課題を解決するため


・単純な計算を毎日繰り返す。足し算、引き算、かけ算100問、割り算100問
・短い文章を繰り返し音読する。A4版3ページ程度の文章14種類
・短い時間で終了できる課題で、かかった時間を計り、集中できる時間を意識する。
・終了後カレンダーにシールを貼り、次回の目標タイムを設定する。


という提案をしています。
その結果、あくまでレディネス(観察した様子)ですが

 

・A児を観察していると、さぼりたい、わがままで授業に参加しないというより、ほかの子どもと少し違った様子があった。

・様々な音に注意を傾けて聞くことができない。

・言語理解がうまくできない。

・言われたことを覚えておけないために、忘れ物が多い。

・課題を指示通りにせず、勝手にやり始めてしまうので仕上がりが非常に雑で、達成感がない。

・文字を書く 習字や絵の具の準備をするときにも手の不器用さがあって細かな作業ができない片付けも苦手なので、時間内に終了できない。


などの様子が見られました。

さらに学習環境の外的要因の面から課題を考えてみると


・周囲から褒められる、応援されるとがんばろうとするが、怒られる、誰かが先にやってしまうと全くやる気が出ない。
・「しっかりしなさい」という励ましは、具体的な指示がないので、あまり効果がない。自己コントロール力にも課題がある。
・集中できない場面で 「何時(分)までするのか 「どれだけするのか」と問うこ、」とが多い。何度も時計を見たり、そわそわして落ち着きがなくなったり、終了までの問題の数を何度も数えたりする。ページを何度もめくったりすることもあった。


等の要因が挙げられたようです。
以上の結果からこのA君に限っては、

 

集中するには、時間の長さや課題の量(どのくらいやるのか)や終了(いつまでやるのか)が予測できる環境の設定が必要である。

 

というのが結論となります。
以上の話をまとめると
①対象者の実態調査
②科学的な知見を用いた検査
③検査結果から考えうる改善課題の提案
④課題による問題の内的・外的要因のまとめ
⑤集中力を阻害する要因から考えうる改善案の再提案
という流れで集中する学習環境を整えることができたそうです。

 

2.考え
よくあるトライ&エラーの話ではなく、②の科学的な知見を用いた検査を元に事実を洗い出し、その後も様々な側面から問題点を挙げ、それを実践し、それでもダメなら改善案の再提案をするという気の遠くなる研究だったというわけですね。
改めて思いますがやはり子育てとは時間のかかるものですね 笑;;;
ただ、この論文から学ぶべきものは多く、どういった流れで集中する環境を作ることができるかの一連の流れが非常に具体的で、レディネスなど自分でも実践できる場面が多くありました。
なので、もし本投稿をご覧になられた方で
「今までいろんな方法を試したけどうまくいかない・・・子育ては難しい・・・」
「うちの子供全然集中力がないの・・・どうしたらいいのかしら?」
と悩んでいる方は一度自分ののやってきた方法を見返し、上記の①から⑤の流れと照らし合わせてみると、そもそもの根本の原因が科学的に明らかになったものでなかったかも?、
観察の部分が自分の主観や感情に寄ったものになり当てが外れたものになっていたかも?というように考えられるので(私も子育てをしている時ついつい主観や感情的になることがあります 笑)、
問題を見つけてもう一度挑戦してみてはいかがでしょうか?
本投稿は以上となります。
ここまで閲覧ありがとうございました。

 

参考文献:
「集中力」を高める学習環境の設定について
http://www.e-net.nara.jp/kenkyo/index.cfm/21,2490,c,html/2490/19_kiyou_h17.pdf